アメリカに住むということ

よそ様の国に住むというのは結構大変です。英語が出来ればいいというものではありません。

ノーマン・ロックウェル

長く商業誌の表紙を飾っていたため、多くの人が知っているノーマン・ロックウェル。

良き時代のアメリカの象徴として明るくポップな絵柄が印象的なノーマン・ロックウェル。

とっても楽しみにしていた「ノーマン・ロックウェル展」に行って来ました。

失業率が20%を超えてしまって死んだようになっているデトロイトのダウンタウン。でも、美術館の周りは以外と観光客らしき人が多く、大人の周りを走り回っている子供たちが無邪気で楽しそうです。

特別展示ルームに入っていくと、テレビのコントローラーのようなものが渡されます。オーディオ・ツアー(展示物説明音声器?)コントローラーです。

「絵画の隣にオーディオと書かれた番号が振ってありますから、その番号をこのコントローラーに入れると自動的に説明が始まるわよ。じゃあ、楽しんでいらっしゃい~。」

と受付のお姉さんから説明を受けてスタートです。

自画像
まず、最初にこの絵が掲げられていました。「3連自画像」です。自画像を描く自分(後姿)、鏡に映った自分、そして、自画像の自分、で3連です。

ロックウェルはポップな図柄が印象的なためポップアーティストというレッテルが貼られていますが、ロックウェル自身、そのレッテル、余りお好きじゃなかったようですね。

アメリカという国を風刺する手段としてポップな図柄をわざと選んだのであって、自分はあくまでも芸術家なんだという誇りを必ず作品のどこかで訴えていたようです。

この作品をよ~くみますと、キャンバスの右端に4枚の絵がピンで留めてあります。
アルブレヒト・ビューラー
レンブラント
ピカソ
ゴッホ
の絵です。それはそれは正確に模写されています。
これらの模写を通じて、

「僕にだって、こー言う絵が描けるんですよ~。ふっ…。」

って言っているわけです。

行きと帰り
ロックウェルの人気が衰えないのは、その陽気でポップな絵柄だけのお陰ではないことが良く理解できました。明るさの中に必ずダークな部分があるからです。社会とか人間の真実をユーモアを込めて描いているからなんでしょう。

この緑色掛かった絵は、「行きと帰り」という2連作です。上半分と下半分で別々の絵です。本物は横に長く、この写真は面白い部分が切れちゃってます。(どこかのサイトに全体の入った絵があるはずです。)

上部は「幸せな家族がバケーションに向かう」の図。
下部は「幸せ家族がバケーションから帰宅する」の図。

上部は明らかにみんなウレシそ~な顔ではしゃいでます。

でも、下部はみ~んな「超疲れた~」って顔しています。
恐らく、バケーション中に家族で大喧嘩とかもあったんでしょう。

この絵の中でもっとも面白いのは、「おばあちゃん」です。行きも帰りも全く同じ顔をしています。「ムッ」とした顔。その表情がこの家族のいろいろなことを説明しているようで、おかしくて、おかしくて。

ロックウェルの後期の作品は、それまでのポップな感じを多少なりとも残しつつ、どんどんとアメリカの暗部に入って行きます。丁度、公民権運動とか、ケネディーとかの時代です。
勇気と尊厳

分離政策が違憲とされ、今まで白人だけが行っていた学校に非白人も行けるようになったものの、特に南部では反感が根強く、非白人に対してあらゆる嫌がらせや事件が起こりました。

護衛のおとなたちに守られながら黒人の女の子が学校に登校する描写は、ポップで明るいロックウェルのいつもの作品とはかなり違います。絵が全体的に赤茶色なのは、血を連想させます。また、壁に投げつけられたトマト、壁に書かれた黒人の蔑称(この単語をアメリカの公共の場で発しますと、大変なことになるぐらい、言っちゃいけない言葉です)など、この時代のおぞましさが力強く描かれています。

この絵のあと、展示の最後の作品として、「ミシシッピの虐殺」が掲げられてありました。これに関しては、この作品だけではなく、この作品が出来るまでの過程も大きな壁一面を使って再現されており、その周りは、展示会場で一番の人だかりとなっていました。この作品を見る限り、ポップなロックウェルはどこにも見当たりません。なんとも圧倒的な作品で、すっかり胸が一杯になってしまった私です。

あ~、やっぱり、美術館って楽しい!

あ、そうそう。ロックウェルの作品って、全部、油絵だったんですね~。カラーインクとか水彩絵の具かとばっかり思っておりました。

近くで見ると、ほんと、凄い迫力です。

チャンスがありましたら、皆さんも、是非。







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